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題名 : どんぐりと山猫
作 : 宮澤 賢治
画 : 小林 敏也
発行所 : 好学社
ご存じ宮澤賢治の童話に、小林敏也さんがシンプルで力強いイラストを付けた絵本です。 発行所が以前のパロル社から好学社に変わっての復刊です。
ある土曜日の夕方、一郎の元におかしな葉書が届きます。
すごく下手な字で、墨も濃すぎてがさがさしています。
「 かねた一郎さま 九月十九日
あなたは、ごきげんよろしいほで、けつこうです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。
とびどぐもたないでくなさい。
山ねこ 拝 」
その葉書を貰って、一郎はうれしくてどきどきして、その夜はうまく眠れませんでした。
翌朝、急いで朝食を済ませると、一郎は谷川に沿った道を川上のほうに向かって歩いて行きました。
途中、栗の木や滝やきのこやリスに、山猫の居所を尋ねますが、みんな朝早くに見たと言いながら、山猫が向かった方向をてんでバラバラに一郎に教えます。
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結局山猫の居所の手がかりを掴めなかった一郎は、谷川の道が尽きても、その先に続く森の中の細くて暗い道を登り続けました。すると、ある時目の前がパッと開けて、明るい草原が現れます。
その草原の真ん中に、片目で、半天のような上着を着て、足のまがった背の低い男が、手に鞭を持って立っていました。
男は山猫の馬車別当で、一郎の元に届いたはがきは、この男が書いたものでした。
一郎が山猫の馬車別当と話していると、風がどうと吹いて、いつの間にか黄色い陣羽織のようなものを着た山猫が立っていました。
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「こんにちわ、よくいらっしゃいました。じつはおとといからめんどうなあらそいがおこって、ちょっと裁判にこまりましたので、あなたのお考えをうかがいたいとおもいましたのです。まあ、ゆっくりおやすみください。じきにどんぐりどもがまいりましょう。 どうもまい年、この裁判でくるしみます。」
やがて、一郎の足元のくさむらに、金色にピカピカ光る、赤いズボンをはいたどんぐりたちが集まってきて、わあわあわあわあと口々になにか言っています。
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さて、わざわざ一郎がよびだされたどんぐりの面倒なあらそいとは?裁判でいったい何が決まるのでしょうか?
実は、子供の頃宮沢賢治の童話は、ほとんど読みませんでした。
せっかく子供部屋の本棚には、数冊置かれていたのに。ちょっと読みだしてみて、なんだか難しくて投げ出していました。
今、こうして絵本で読んでみると、旧仮名遣いや方言を含めて、とても味わいが感じられますね。とくに、一郎に届いたはがきがいい。
物語には、大人の押し付けの教訓も哲学もなにも含まれていなくて(と、思います)、ただこんなことがあったらいいなぁーという、純粋なファンタジーの世界で、そこも気に入っています。
お子さんにはちょっとわかりづらいかもしれませんが、大人には何度も読み返してみたい一冊になるような気がします。
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